■積み上げたものが壊れた■
先月の沖縄キャンプ中に行われた地元の子どもたちとの野球教室。
藤浪投手が投球の見本を見せる場面のなかで、こんなやりとりがありました。
(子ども)「真ん中に投げて!」
(藤浪投手)「そんなコントロールがあったら 俺、もっと勝ってるで。」
思わずこぼれた本音でしょうか。
昨シーズンの藤浪投手は開幕からコントロールに苦しみ、故障以外で初めて不振による2軍落ちを経験。過去5年でワーストとなる3勝にとどまり、その悔しさはシーズン後の会見で「今まで積みあげたものが壊れてしまった」と述べるほどでした。
(記者会見する藤浪投手)
■アメリカで見つけた不振脱却へのヒント■
不振からの脱却を目指す今年は1月から精力的に動きました。
(藤浪投手が自主トレ)
単身でアメリカに渡り、一緒に練習したのは、ドジャースの左のエース、クレイトン・カーショー投手。
サイ・ヤング賞を3回受賞するなどまさにメジャーを代表する投手から学んだのが、決め球、カーブの投げ方でした。
特徴は、腕を縦に大きく振り降ろすフォーム。
帰国後のキャンプで、藤浪投手はこのカーブを多く投げ込んでいました。
(投球練習の藤浪投手)
実は、コントロールの安定につなげるため取り入れたものでした。
香田勲男投手コーチは投球の際、腕が横振りになる癖が不安定なコントロールの一因だったと分析。
「腕を縦に振るカーブを投げることで、投球を横回転から縦回転に矯正する。それが出来れば左右へのコントロールの乱れは少なくなる」と狙いを説明しました。
■ポテンシャルを生かせ!■
高校時代は、メジャーに渡った大谷投手と並び注目され、プロ入り後も順調に活躍を続けていた藤浪投手。
不振から抜け出すため、このオフはアメリカだけでなく全国各地を回って体幹トレーニングや動作解析の専門家、それに理学療法士などからアドバイスを受けてきました。
阪神の金本監督も、藤浪投手について「去年はふがいない成績だと自覚していると思うし、ことしにかける気持ちは相当なものだと思う。彼のためにできることは何でもやってあげたい」と復活へ、変わらぬ信頼を口にしました。
誰もが認めるポテンシャルの高さ。
大阪桐蔭高校時代の同期でオリックスに所属する澤田圭佑投手が藤浪投手に送ったメッセージです。
「周囲からいろいろ言われていると思うけど、気にするな。お前はすごいんだ。自信を持て。」
甲子園の春夏連覇時には背番号10の2番手だった澤田投手。背番号1のエースとして偉業を達成した藤浪投手の底力を誰よりも実感しているのかもしれません。
このメッセージに、笑みを浮かべながら「有り難いですね」と述べた藤浪投手。
多くは口にしませんでしたが、澤田投手のメッセージと同じ気持ちを抱いているに違いないと感じました。
■復活へ 勝負の1年■
「やるべきことをやることが大事。それが出来たら大丈夫だと信じている。」
キャンプ中に、自分に言い聞かせるように話していた藤浪投手。
インタビューでは、「ありきたりで恥ずかしいですがアメリカに1人旅をして自分の考えが小さかったことに気づき、心が洗われた。去年はいろいろと考えたしいろんなことを思った。でもシンプルにやることが一番大事だと思っています」とも。ふっきれた表情で語ってくれました。
(復調印象づけた藤浪投手)
自分を信じ続けられたその先には“球界を代表するエース”の座が待っているはずです。
(阪神担当 今野朋寿記者)